2023/10/23 22:48
タータンコレクションの読み物としてはたぶんこれが、最終回。
最後にご紹介するのが、縫製を担当してくれた愛媛・三瓶の清水縫製さんです。
愛媛・松山市の中心地から1時間50分ほど。
くねくね続く海沿いの道の先にあります。
生地を載せた大型トラックがすれすれに通るぐらいの、運転手さんもハンドルを握りしめて「こんな先に縫製会社がほんとにあるんかい?」って疑いたくなるほど。
かつて紡績業で栄えた三瓶には、今でも数件の縫製会社が営んでいます。
そのひとつ、清水縫製さんは、全国区のブランドが「信用して任せられる」と全幅の信頼を寄せるほどの腕前と思いを持っています。
1年先まで仕事が埋まる忙しさだけれど、FOLKの前回のコレクションに続いて、今回も引き受けてくれました(感謝です!)。
清水縫製を営むのは笑顔がすてきな清水義信、寿美子さんご夫妻。
ふたりは大阪の縫製会社で出会いました。
繊維のまち、大阪ナンバーワンの呼び声が高いプレタポルテ専門の会社で、義信さん5年、寿美子さんは10年、腕を磨きます。
昭和60年代、大阪から三瓶に戻り、義信さんのご両親が営む縫製会社を引き継ぎました。
今回縫製をしてもらったタータンコレクションの中でもその技が光るのがジャケット。
着心地が考えられた縫い目、こまめなアイロンがけで仕立てられた美しいフォルムなどなど、プロの仕事が、見ても、着てもズバッとわかります。
「たとえ指示にはなくても、『こうしてあげた方が着やすいのではないか』と、着る人のことを考えて作っています」とご夫妻。
手間は増えても、対価が増えるわけではありません。
それでも、“着る人ファースト”を貫きます。
大量生産される洋服の多くが効率優先でつくられる中、手間を惜しまず、着る人の立場になって作業と時間を重ねる。
それが結果、着る人やメーカーの厚い信頼へとつながっていきます。
「これが僕らの仕事やと思ってます。こだわりがないと、この仕事は淘汰されていきますから」。
サンプルをつくった青木みちこさんも今回のコレクションで、清水縫製さんから多くのことを学んだと、話していました。
「腕があれば、どんな場所でも求められるんですね」と、みちこさん。
清水縫製さんとみちこさんの出会いも、わたしたちにとってとても感慨深かったです。
愛媛のものづくりを担う、清水縫製さんと青木みちこさんのでっかい熱量でつくりあげた
ジャケット、ジレ、スカート、パンツ、ワンピ。
無事にあちこちに巣立って、楽しく着回してくれたらうれしいです。